佐々木竹見・王者の眼差し
プロフィール
佐々木竹見

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。
"鉄人"の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

記事

戸塚記念&2歳5&長月特別

(2016/9/27)

9月の川崎開催は、9,12,13日の3日間。メインとして行われた3歳重賞・戸塚記念は、山崎誠士騎手が鞍上となったベルゼブブが逃げ切って、重賞初挑戦での勝利となりました。

そのほか、12日の第2レースに行われた2歳戦では、瀧川寿希也騎手のパストマスターズが豪快に差し切りを決めました。また同日の第10レース、長月特別は、町田直希騎手のエメンタールベルンが1番人気にこたえての勝利となりました。

今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

戸塚記念(優勝馬ベルゼブブ) 2016年9月13日(水)
スパーキングレディーカップ(優勝馬ホワイトフーガ)
斎藤 ベルゼブブが思い切ってハナを切りました。
竹見 山崎騎手はハナを取りきったらすぐにペースを落としています。最初の3コーナーあたりから一気にペースが落ちたので、うしろは一団になって抑えるのに苦労する馬もいました。スタンド前でもスローペースで、後続勢で仕掛けてくる馬もいませんでした。人気のバルダッサーレ(吉原騎手)も外目の5番手あたりのいい位置につけていましたが、みずから仕掛けて行けば、他馬の目標になったでしょうし、58キロを背負っていることもあって、吉原騎手は難しかったと思います。
斎藤 向正面の中間あたりから一気にペースが上りました。
竹見 3コーナーあたりでは2番手以下との差が開いて、3、4コーナーでは後続は並びかけることもできませんでした。ベルゼブブはこのあたりで逃げ切ったなと思いました。
斎藤 山崎騎手は、4コーナーでもまだ手ごたえに余裕があるように見えました。
竹見 直線では、後続は差を詰めて来られませんでした。最後にバルダッサーレが来ますが、ベルゼブブはセーフティリードでした。人気になっていたバルダッサーレですが、やや太めのところもあったと思いますが、一瞬の脚が使える馬ではないので、一気に離されてしまうと厳しいものがあります。今回は、何と言っても山崎騎手の好騎乗です。逃げ馬としては理想的なレース運びでした。
2歳5(優勝馬パストマスターズ) 2016年9月12日(月)
斎藤 瀧川騎手のパストマスターズも行く気を見せましたが、3番手からになりました。
竹見 外から今野騎手のアメノヒメ、酒井忍騎手のエムハートが気合を入れて行ったので、瀧川騎手は控えました。それでも3番手の内は、いい位置だったと思います。2コーナーから向正面に入るところでは一気にペースが落ちて、パストマスターズがかなり行きたがるところ、瀧川騎手は懸命になだめていました。
斎藤 3コーナーあたりで瀧川騎手は大きく位置取りを下げました。
竹見 向正面で後方から森泰斗騎手のマネーが一気に仕掛けてきて、さらに4番手の外にいた真島騎手のドリームダンサーが譲らずに仕掛けて、この2頭が競り合って行ったことで一気にペースが上りました。あまりに急なペースアップだったので、瀧川騎手は置かれてしまったのでしょう。
斎藤 それでも3、4コーナーで外から上がって直線で差し切りました。
竹見 直線で先頭に立った真島騎手のドリームダンサーが勝ってもいいような展開でしたが、4コーナーで大外を回った瀧川騎手が一気に差し切りました。パストマスターズの直線での瞬発力はすごいですね。デビュー2戦目とは思えない、いいものを持っています。これからまだまだよくなるでしょう。距離が延びてもいいと思います。
長月特別(優勝馬エメンタールベルン) 2016年9月12日(月)
斎藤 町田騎手はスタート後、仕掛けてはいかず、徐々に内に入れて5番手からの追走でした。
竹見 エメンタールベルンはスタンド前で行きたがるところがありましたが、町田騎手がうまく抑えていました。終いの脚がいいのはわかっていますから、控えて脚を溜めて行ったのでしょう。それでも向正面では先行集団にとりついています。
斎藤 4コーナーからは4頭での追い比べとなりました。
竹見 エメンタールベルンの直線での伸びはすばらしかったです。以前、的場騎手が乗っていた時は逃げることもあったのですが、抑えて末脚を生かすようになってから強くなりました。
斎藤 今回、町田騎手はどこがよかったですか。
竹見 前半なだめてうまく折り合いをつけて行ったのがよかったと思います。前半から行っていれば、最後にあれほど伸びる脚は使えなかったでしょう。うしろから行くことが多い町田騎手のようなタイプが、この馬に合っているのかもしれません。

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