佐々木竹見・王者の眼差し
プロフィール
佐々木竹見

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。
"鉄人"の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

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エンプレス杯&アクアマリンフラワー賞&未来賞

2月末から3月にかけての開催のメインはエンプレス杯。中央勢4頭のゴール前での大接戦から抜け出したのは、武豊騎手のラヴェリータでした。ラヴェリータは昨年のエンプレス杯2着の雪辱を果たすとともに、川崎コースでは5戦4勝、2着1回としました。

そのほか、3月1日のJRAとの条件交流アクアマリンフラワー賞を勝った増田充宏騎手、3月3日に行われた若手ジョッキー同士の一戦、未来賞を制した伊藤裕人騎手と、今回は若手ジョッキーの活躍についてもお話をいただきました。(聞き手・構成/斎藤修)

エンプレス杯(優勝馬ラヴェリータ) 2011年3月2日(水)
ラヴェリータ
斎藤 武豊騎手のラヴェリータは、スタートはよかったですが、中団に下げる展開になりました。
竹見 ラヴェリータはスタート後は3~4番手でしたが、抑えたために御神本騎手のネオグラティアに外から来られて、さらにそのあとにデムーロ騎手のミラクルレジェンドにも来られて位置どりを下げてしまいました。御神本騎手が行った後にすぐに外に出せばよかったと思いますが、1周目のスタンド前では完全に内に閉じ込められる形になりました。スローペースになって、武騎手も外に出したかったようですが、まったく出せるところがありませんでした。これは厳しいところに入ったな、と思いましたが、こうなってしまったら4コーナーまで内で我慢するしかありません。
斎藤 それでもゴール前の伸びには驚かされました。
竹見 ラヴェリータは、この展開では勝つのは難しいだろうと思って見ていましたが、最後は運よく内が開いてくれました。武騎手もよく我慢したと思いますが、このメンバーでは力の違いもあったと思います。
斎藤 直線では、北村友一騎手のブラボーデイジーと、吉田隼人騎手のプレシャスジェムズがそのまま押し切るかという勢いでした。
竹見 ブラボーデイジーはペースを落として完全に逃げ切る態勢でした。ただブラボーデイジーは、外にいたプレシャスジェムズに馬体を併せに行ったことで、結果的にラチ沿いが大きく開くことになってしまい、ラヴェリータには願ってもない展開になりました。直線で内を開けなければ、もしかして勝っていたかもしれません。
斎藤 ミラクルレジェンドのデムーロ騎手は、終始ラヴェリータをマークしているようでした。
竹見 ミラクルレジェンドは4コーナーでもラヴェリータのすぐ前にいて、内を突くこともできたでしょうが、外を選択しました。デムーロ騎手もさすがに先行していたブラボーデイジーとプレシャスジェムズがあれほど外に来るとは思わなかったでしょう。プレシャスジェムズはなんとかとらえましたが、ブラボーデイジーには届きませんでした。ただゴール前で接戦になった中央の4頭は、いずれにもチャンスがあったように思います。
アクアマリンフラワー賞(優勝馬ブラゾーハリー) 2011年3月1日(火)
斎藤 増田充宏騎手のブラゾーハリーは、スタート後から楽な手ごたえで先行できました。
竹見 ダッシュよくスタートして、行く気になればハナに行けたと思います。1コーナーで抑え、内枠のコウマルクイーン(JRA・津村明秀騎手)を先に行かせ、ぴたりとマークして進む形になりました。枠順が逆なら、おそらく増田騎手のほうがハナに行っていたでしょう。
斎藤 ブラゾーハリーは、終始コウマルクイーンをマークする形で、ゴール前は2頭の叩き合いになりました。
竹見 最後は増田騎手のブラゾーハリーがハナ差で勝ちましたね。最初から余裕があって、内の馬を行かせて差し切るという好騎乗でした。ハナに行けていれば、もう少し差をつけて勝てたかもしれません。
斎藤 道中は、今野忠成騎手のハイパワーヒーロー、的場文男騎手のケイティケンタが追う形でした。
竹見 今野騎手のハイパワーヒーローも3番手のいい位置で、楽な感じで追走していましたが、最後は案外伸びませんでした(5着)。大飛びの馬で、体型的にも道悪はあまり得意ではないのかもしれません。こういう道悪の馬場では、ある程度前のほうにつけられる馬でないと厳しいです。よほどのハイペースにでもならない限り、中団や後方から追い込んでくるというのは難しいでしょう。最後は戸崎騎手のカンユウが伸びてきましたが、それでも4着でした。
未来賞(優勝馬カネツパワー) 2011年3月3日(木)
斎藤 勝ったカネツパワーの伊藤裕人騎手は、まずまずのスタートで、最初のスタンド前では、まわりをよく見ながら好位をとりました。
竹見 伊藤騎手は早めに抑えて、余裕がありました。前の2頭が競り合う形で少しペースが速くなったこともあって、その直後3番手を追走できました。伊藤騎手にとっては、絶好の展開になったと思います。
斎藤 3~4コーナーでは余裕の手ごたえで先頭に並びかけ、直線で抜け出しました。
竹見 伊藤騎手は騎乗姿勢もいいし、センスもあるんですが、追うときに手綱に余裕があってぶらぶらしています。これでは馬に遊ばれてしまいます。最後は手綱をびしっと締められるようになると、もっとよくなると思います。こういう若手ジョッキーだけのレースは、たまに組んでくれるといいですね。

2011年3月23日

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